プロジェクトストーリー

子供が見上げる宇宙に誇れる仕事を子供が見上げる宇宙に誇れる仕事を

“明るくて柔らかな笑顔”――。つくば事業部の服部和恵さんの印象である。宇宙システム分野の第一線で活躍を続けること11年、という華々しさとは対照的、と言ったら失礼だろうか。しかし、仕事の話になると瞬時に表情が真剣なものへと変わる。キャリアで最も印象的なのは、入社3年目に初めて作業全てを任されたH2Aロケット4号機の搭載ソフトウェア開発、通称みどりII(ADEOS-II)ミッションだ。

H2Aロケット4号機の誘導解析

服部和恵服部和恵服部 :『みどりIIのミッションでは誘導解析を担当しました。搭載ソフトウェアの航法・誘導モジュールの作成と検証です。航法・誘導モジュールとは、ロケットが目標の軌道にきちんと到達できるよう、機体姿勢やエンジンの燃焼停止タイミングなどを計算するソフトウェア。そして、各ロケットのミッションに合わせて、航法・誘導モジュールの定数を設定し、様々なシミュレーションで検証するのが誘導解析です。ミッションが遂行できることを確認するための重要な作業なんです。』

ロケット打ち上げの緊張と感動

H2Aロケット H2Aロケット服部 :『ちょうどこの解析の前に、種子島の射場にあるロケットを見学に。エンジンのノズルを動かしているところまで見に行き、開発するソフトウェアがどの辺りに搭載されるか等も教えてもらいました。間近で本物のロケットを見てその迫力に圧倒されました。そして、ロケットに関わる人たちの多さとその熱気に感動。普段は机でシミュレーションを重ね、数字やグラフと格闘していますが、改めて自分たちが関わっていることの大きさを実感することができました。』

――こうしてロケットの打ち上げを見た服部さんは、自らも責務を果たそうと必死にH2Aロケット4号機の誘導解析に打ち込んだ。小さなミスもまったく許されない仕事。本当に大丈夫かすべてを疑い、少しでも普段と違う挙動があると自分が納得できるまで調べた。極度の緊張が続く。しかし、スケジュール通り着実に搭載ソフトウェアを完成させていった。

服部 :『開発したソフトが初めて搭載された4号機が打ち上げられるときは、それはもう緊張しました(笑)。打ち上がったときは本当にうれしかった。ロケット開発に携わった人たちとの一体感がありました。その後、何度かロケットの誘導解析を担当していますが、このときほど印象に残ったことはありませんでした。』

世界に通用するMSSの技術

服部和恵 服部和恵

――MSSといえば「宇宙開発」、というイメージがある。“エンジニア服部”から見た特筆すべきMSSの宇宙技術のすごさとはなんであろうか。

服部 :『H2Aロケットは現在14号機まで打ち上がっていますが、MSSは宇宙開発事業団(現:宇宙航空研究開発機構 JAXA)発足以来、常にロケット開発に携わっており、構築されてきた確固たる技術があります。特に、航法誘導及び解析の技術は素晴らしいと思います。解析技術やシミュレーターの開発技術なども同様です。
以前、他のロケット搭載ソフトウェアの開発のために海外出張の機会を得ましたが、米国のエンジニアと対等に渡り合えたときにMSSの技術の確かさを実感しましたね。』

“エンジニア”と“母”の二役

服部和恵 服部和恵

――服部さんは事業部のエンジニアと結婚。一児の母に。「“お母さん”になっても仕事を続けている先輩たちがいたので、無理ということはないだろうと思っていた」と語る服部さんだが…。

服部 :『仕事が大好きな私ですが、子供がかわいすぎて「仕事なんて」となってしまうのではと自分で心配していました。でも、実際は子育てが大変すぎて…(笑)。「早く仕事がしたい」「できることならなんでもします」という気持ちで職場に戻ってきました。何度も客先に出向くような仕事を担当するのは難しいと思いますが、自分のできる範囲で仕事をしたいという希望が叶っている状態ですね。復帰当時は、子供が熱を出したときに迎えに行かなくてはいけないなど大変でしたが、現在は3歳になったので落ち着いて仕事ができるようになりました。会社の理解と協力がなければ、仕事を継続することはできなかったと感謝しています。』

これからの未来

服部和恵服部和恵服部 :『現在携わっているのは、これから打ち上げられる「いぶき(GOSAT)」の最終シミュレーションです。いぶきは以前に誘導解析も担当しています。こうした宇宙輸送系の開発・解析は非常に興味深く大好きな分野なので、頑張って続けたい。将来、子供に母親の仕事を誇りに思ってもらえたらうれしいですね。』

――世界で注目される大規模な仕事を任される“エンジニア”。そして子育てに奮闘する“母”として、常にひたむきにしなやかに走り続けてきた。自分を支えてくれた上司や周囲への感謝を忘れない服部さんの後には、後輩たちがきっと続いていくだろう。