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がん遺伝子解析サービス
研究・製造現場の情報を一元管理、仕事の品質と生産性を高めるラボラトリー情報管理システム LabVantage ラボバンテージ 研究・製造現場の情報を一元管理、仕事の品質と生産性を高めるラボラトリー情報管理システム LabVantage ラボバンテージ

導入事例インタビュー

慶應義塾大学
医学部
腫瘍センター
ゲノム医療ユニット長 特任教授
西原広史先生

がんゲノム医療に必要ながん遺伝子解析サービスを提供
病理医と連携し、一貫した精度管理が可能です

ゲノム情報に基づいた個別化医療により、従来の“疾患で薬を処方する”時代から、“遺伝子で薬を処方する”時代になりつつあります。特にがん領域では、患者さんごとに治療効果と安全性を最適化できる治療薬を選択する精密医療により、効果が期待できない抗がん剤の副作用回避とコスト削減が期待されています。
精密医療の実現のために、当社と共同開発したがん遺伝子検査について、慶應義塾大学医学部 腫瘍センター ゲノム医療ユニット長の西原広史先生にお話を伺いました。

わずか数日で、100~200ものゲノム解析が可能に

—西原先生の、現在の取り組みを教えてください。

西原先生 私はもともと病理医をしており、基本的にはがんの病理診断がメインです。がんができる原因、浸潤転移のメカニズム研究やがんの新しい治療法・診断法の開発など基礎研究がベースでした。ただ、ここ数年はゲノム診断に特化して仕事をしておりまして、個別化医療ができるシステムをつくるのが今の目標です。

—個別化医療に関心を持つようになったきっかけは何ですか?
わずか数日で、100~200ものゲノム解析が可能に

西原先生 個別化医療への関心は、病理の仕事をやりながらもずっと持っていました。7~8年前に免疫染色による個別化診断にも取り組み始めたのですが、ひとつの遺伝子を調べるだけでも膨大な時間がかかり、臨床で使うのは難しいと感じていました。転機が訪れたのは4~5年前。一緒に仕事をさせていただいていた病院で、次世代シークエンサーを購入する機会に恵まれたのです。それまで数週間かけて1つの遺伝子を解析していたものが、わずか数日で100~200もの遺伝子解析が可能になり、私の中で大きなパラダイムシフトが起こりました。その頃は世の中でもちょうど遺伝子を調べて個別化診断をするという方向性が示された時期だったので、その時から本格的にゲノム解析による個別化医療に取り組み始めました。

遺伝子を解析し、患者様に合った治療薬をピンポイントで提供

—「がん遺伝子検査(PleSSision検査)」とは、どのような検査ですか。

西原先生 「がん遺伝子検査(PleSSision検査)」とはPathologists edited, Mitsubishi Space Software supervised clinical sequence system for personalized medicineの略語で、がん患者さんの腫瘍から採取した遺伝子を調べ、患者さん一人一人の遺伝子異常に合わせた治療法を提供するための遺伝子パネル検査です。従来の抗がん剤治療では、がんを発症した臓器別の抗がん剤を処方してきました。しかし近年、たとえ同じ臓器のがんでも、患者さんごとに原因となる遺伝子異常には違いがあり、それによって効果的な薬も異なることが分かったのです。
当検査では次世代シークエンサーを用いて160の遺伝子を解析し、がんの原因となったドライバー遺伝子を特定します。それによって患者さんのがんに合った治療薬の情報を遺伝子レベルで提供することが可能になるのです。

—どのような方が検査を受診していますか。

西原先生 これまで200名以上の方が受診されましたが、うち80%は標準治療が終わった方です。がんの内訳としては大腸がん、すい臓がんの方が圧倒的に多く、次に乳がんや胃がんの方。その他多種多様ながん患者さんが受診されていますが、白血病や悪性リンパ腫など血液系のがんに関しては有効な治療法を提示できる可能性が低いため、基本的には固形がんへの有効性が高い検査になります。

病気を理解することで
患者と病院側、双方の戦略的な治療選択が可能に

—患者さんにとってのメリットを教えてください。

西原先生 患者さんにとっての一番のメリットは、自分の病気に対する理解が深まるという点です。ほとんどの患者さんは、なぜ自分ががんになったのか、何が悪いのかをわからないままに治療をしています。しかし検査によって遺伝子異常を特定し、因果関係が説明できるようになれば、より適切な治療の選択ができる。今後新薬が開発されたとしても、自分の遺伝子異常が理解できていれば、新薬が自分にとって有効かどうかの判断が可能になり、効果の期待できない薬の副作用を回避することにつながります。中には遺伝子異常に対して有効な薬を提示できない患者さんもいますが、「最先端の検査を受けた結果、それでも有効な薬がないのであれば仕方がない」「残された時間を有意義に使う決心がついた」とご自分の状況を受け入れ、納得して頂けています。
基本的にはデメリットのない検査になりますが、時には遺伝子異常に見合う治療薬が提示できない場合もありますので、自分の病気を理解するための検査であるということ、治療薬がない可能性もあることを正しく患者さんに伝え、理解を得た上で検査に入ることが重要です。

—医師やコメディカルにとってはどんなメリットがありますか。
病気を理解することで<br>患者と病院側、双方の戦略的な治療選択が可能に

西原先生 主治医にとっては、手探りではなく戦略的に治療を進めていける点が大きなメリットになります。従来の治療では抗がん剤を処方する際、なぜその薬を処方するのかを説明することができませんでした。なぜならば段階的に決まっている薬を使っているに過ぎないからです。しかし患者さんにとっては副作用の心配もあるため少しでも有効性に関する情報を聞いておきたい。ここで「がん遺伝子解析」によってドライバー遺伝子が特定できれば、遺伝子との因果関係による抗がん剤処方理由を説明できるだけではなく、今後の見通しも含めて戦略的に治療することが可能になります。
実際、何とか患者さんを救いたいが手詰まり状態になり、「この検査をすれば何かわかるかもしれない」ということで紹介される主治医の先生は多いです。そこで返ってきた患者さんの検査結果レポートを見て、有用性を実感頂けたのでしょう。ここ1年は紹介も多くなり、導入を検討される病院も増えました。また看護師や薬剤師等のコメディカルにとってもメリットはあります。がんの原因と、それに基づく治療戦略がはっきりすれば、患者さんへの対応がしやすくなります。日本ではまだ始まったばかりの医療なので、初めは自らの立ち位置や検査の意義が分からなかったという方も多いのですが、次第に検査の有用性や、最先端の医療に携わっているということを実感したという声を聞いています。

日本人の遺伝子に合った、間口の広い高精度解析が可能

—他の遺伝子パネル検査との違いは何ですか。

西原先生 「がん遺伝子解析サービス」が他の遺伝子パネル検査と大きく違うのは、プレアナリシス段階から検査結果の解釈まで一貫して、病理医がしっかりとした精度管理を行っているという点です。通常の外注検査を行っている施設では病理医が検査に関与しないため、あらかじめ「がん細胞含有率が50%以上の検体でなければならない」という基準を一律で設けます。そうなると基準に満たない人は検査を受けることができません。
その点、病理医が関与する「がん遺伝子検査」では、仮にがん細胞が5%しかない検体であっても、その情報を病理医が解析担当者に伝えることができます。そうすれば解析を行う側も、5%しかがん細胞がないことを勘案した上で解析ができるのです。今まで解析不能とされてきた患者さんでも、「がん遺伝子解析サービス」なら解析ができるかもしれないという点。これが一番大きなメリットです。

—三菱スペース・ソフトウエアとの、協業はどうでしたか?

西原先生 次世代シークエンサーさえあれば、一度にたくさんの遺伝子情報を得ること自体は難しいことではありません。ただ、数ある遺伝子変異の中で、どれががんに直接影響を及ぼしているのかを判断することは非常に難しい。そこで重要になってくるのがバイオインフォマティクスという研究分野になります。しかし実際に臨床で使うためには、判断の精度はもちろんスピードも要求される。研究結果が半年後に出るのでは間に合わないのです。それに対応できるチームとして紹介されたのが三菱スペース・ソフトウエアのバイオインフォマティクスチームでした。
私が最も感銘を受けたのは、三菱スペース・ソフトウエアのバイオインフォマティクスチームは非常にマンパワーがあるという点。診療体制の中では、時には解析を1日で行うなど、非常に急いで頂くこともあります。三菱スペース・ソフトウエアの方にはチームで対応して頂いているので、一人が対応できなくても、チーム内の他の誰かがカバーしてくれる。非常に迅速に対応してもらっています。また、iPS細胞の解析をやってこられたチームなので、人の遺伝子を調べ、疾患データベースと照らし合わせるスペシャリストが揃っていることも大きい。以前他の複数のバイオベンチャーと連携したこともあるのですが、迅速な対応から精度管理の正確性、全てにおいて三菱スペース・ソフトウエアは突出していました。マンパワーと経験。この2点を兼ね揃えたチームがいたからこそ、迅速で精度の高い検査を実現することができたと感じています。

日本人の遺伝子に合った、間口の広い高精度解析が可能
日本人の遺伝子に合った、間口の広い高精度解析が可能

意識改革と、病理医・遺伝医療の専門家の確保が重要

—導入に際し、必要なことは何ですか。

西原先生 大まかに言うと3つあります。まずは遺伝子検査に基づく「がん遺伝子解析」の意義を、臨床側がきちんと理解していること。それがないと、いくら導入しても実際には検査が実施されないということにもなりかねません。
従来の抗がん剤治療では、がんとなった臓器別に薬を処方してきたため、遺伝子異常に基づいて本来他の臓器に用いてきた抗がん剤を使用するということは頭の切り替えが必要になります。遺伝子パネル検査に対して懐疑的な医師がいることも事実です。そういった方たちが遺伝子を検査することの意義を理解し、前向きに「がん遺伝子解析」を実施していくための意識改革が必要です。
次に、病理医が関与して精度管理ができる病院であることが望ましいです。多数の遺伝子を調べる遺伝子パネル検査は、病理検体の品質保証や事前の病理診断が非常に重要です。当検査では病理医のいる衛生検査所と組んでいるので、もし病理医がいなくてもカバーできるようにはしていますが、病理検体の取扱いという点でいえば、病理の知識がある人がいたほうがスムーズです。
3つ目に、遺伝に関する専門家がいる病院であるということです。当検査の特徴の一つでもあるのですが、精度管理のために正常な組織として白血球由来の遺伝子も調べます。この過程で、遺伝性のがん(家族性腫瘍症候群)であることが判明することがあります。がんの体細胞変異/遺伝子変異の判断がつくということはメリットでもありますが、非常にデリケートな話題でもあります。もし二次的に出てきた遺伝性腫瘍の情報が誤って患者さんに伝えられてしまえば、患者さんだけでなくそのご家族をも不安に陥れてしまうことになります。そうならないように、遺伝医療の専門家が関与できる病院である必要があります。

—導入の手順を教えてください。

西原先生 導入の検討から実際に検査がスタートするには最低でも3~4か月程かかります。一般的にはまず病院の経営層、並行して倫理委員会に上程することになります。これらの会議に通れば、次は具体的な対応プロセスを構築していく必要があります。患者さんへの説明方法や病理検体の入手方法、検体の取扱いや治療方針の立て方を細かく決めていきますが、こちらに関しては我々の方でサポートが可能です。
なお、見学も受け付けています。現場の臨床医から遺伝カウンセリングの担当者、先日は政府関係者の方も来られました。一度見学しただけではなかなか難しいところもあると思いますので、まずは患者さんへの外来対応、そして検査結果を基にしたカンファレンスと必ず2回来て頂いています。それでも「実際に自分たちでできるのか」と不安になる方が多いと思いますが、カンファレンスに関してはインターネット会議での参加が可能です。そこでたくさん症例を見ればイメージもつかみやすくなり、スムーズに導入できるかと思いますので、まずは一度ご相談頂ければと思います。

今後は全ゲノム解析を見据えながら、公的医療制度を使った診療体制に

—今後の展望を教えてください。

西原先生 この数年でも、オプジーボをはじめ様々な新薬が出てきています。そういった新薬に対応するためには、検査システムのアップデートが必要になります。現在は160の遺伝子を解析していますが、ゆくゆくは人がもつおよそ23,000全ての遺伝子を一度に解析するホールエクソーム解析が視野に入ってくるはずです。全ゲノムを調べることで診断精度を上げていくことが期待されます。
また、現在「がん遺伝子解析サービス」は自由診療となっています。薬に関してもそうで、肺がんの患者さんに乳がんの薬が効くことが分かっても、保険で認められていないため患者さんにとっては金銭面の負担が大きい。本来プレシジョン・メディシンは、欧米ではがんの診断初期に受けるものです。
自分に合った抗がん剤がどのようなものなのかを見極めた上で、最初から一番効果的な薬を使用するのが一般的ですが、残念ながら今の日本の保険医療制度では厳しい。今後1人でも多くの患者さんが自由にがん遺伝子検査を受けられるよう、何かしらの公的医療制度を使った診療体制にしていきたいです。

今後は全ゲノム解析を見据えながら、公的医療制度を使った診療体制に
慶應義塾大学医学部 腫瘍センター・ゲノム医療ユニット。

慶應義塾大学医学部 腫瘍センター・ゲノム医療ユニット。
西原先生はここで日々、がんの個別化医療発展に取り組まれています。

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